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教室検討会
当科における糖尿病合併妊娠および妊娠糖尿病の検討
糖尿病合併妊娠:妊娠前にすでに糖尿病と診断されている
妊娠糖尿病:(Gestational Diabetes Mellitus:GDM)
妊娠中に発症したか、または初めて認識された耐糖能低下をいう。
分娩後正常化するか否かは問わない。(以前は正常化するものとされていた)
よって、GDMに含まれる耐糖能低下は幅広いバリエーションを持つ。
GDMとしたものは分娩後に改めて糖負荷試験を行い、病型分類を行う。
(日本産婦人科学会 1995)
・以前から未発見の糖尿病があり、妊娠中の検査で初めて発見されたもの
・以前から軽度の糖代謝異常があり、妊娠中に初めて糖尿病型を呈するに至ったもの
・妊娠中に糖尿病型よりも軽い糖代謝異常が初めて出現したもの
・妊娠中に発症した糖尿病
GDMの診断の意義
・将来の糖尿病発症の危険率が増大
O'sullivan GDMのfollowで20年後に約半数が真の糖尿病に移行
・周産期合併症の予知、予防
GDMのスクリーニング
従来は、妊娠中の糖尿、巨大児出産の既往、肥満などの糖尿病を疑わせる徴候のある場合のみ糖負荷試験を実施→有効性は50%程度
50g glucose challenge test (欧米)
(1時間後の血糖>130mg/dl)
日本産婦人科学会ではすべての妊婦にスクリーニングを行うことを推賞
食後2〜4時間後血糖>100mg/dl(日本産婦人科学会周産期委員会)
なおリスクファクターのある場合は、<100mg/dlでも75gOGTTを行う。
国際的には、診断基準は統一されていない。
GDMの診断基準(日本産婦人科学会)
75g負荷試験において
静脈血漿グルコース値
空腹時 ≧100mg/dl
負荷後1時間 ≧180mg/dl
負荷後2時間 ≧150mg/dl
将来の糖尿病発症を念頭においたものと解釈
糖尿病妊娠のリスクファクター
・糖尿病の家族歴
・HFD児分娩の既往
・原因不明の習慣性流早産
・原因不明の周産期死亡
・先天奇形児の分娩歴
・強度尿糖陽性もしくは2回以上の尿糖の反復
・肥満
・不妊症(排卵障害 PCO type)
・羊水過多症
・妊娠中毒症
糖尿病と奇形
糖尿病合併妊娠の奇形発症率 6〜9% 正常の約3倍。
奇形の種類は多岐にわたり、特有の異常はない。
妊娠早期のHbA1cと奇形の発症は強い相関あり。
検討事項
・当科でも妊婦の血糖のスクリーニングを開始する。
(初診時に随時血糖検査を行う)
・不妊内分泌外来初期検査における随時血糖検査を組み入れる。
症例提示
症例1 30歳 1-0-0-1
〈妊娠歴〉1994 妊娠38週 骨盤位にて帝王切開 2740g 女児
〈既往歴〉特記事項なし
〈家族歴〉実父 糖尿病および高血圧にて49歳で死亡
〈現病歴〉妊娠30週より尿糖陽性、突然の3kgの体重減少あり。
32週4日 胎動の減少あり。県立六日町病院受診。
子宮胎児発育遅延を疑われる。翌32週5日 胎児心拍図上、胎児仮死疑われ
当科に搬送。
〈胎児評価〉
推定体重1290g 羊水ポケット1.5cm
臍帯動脈拡張期途絶 中大脳動脈RI 0.818
両側子宮動脈血流抵抗上昇、notch(+)
胎児心拍図 loss of variability
〈母体評価〉
身長159cm 体重59kg
血圧130/80 mmHg 浮腫(-) 尿蛋白(-) 尿糖(3+)
〈経過〉 胎児仮死の診断にて緊急帝王切開術施行
1258g 男児 Ap8/8点 臍帯動脈pH 7.11
〈術後〉 HbA1c 8.3
75gOGTT
0 30 60 90 120
139 225 325 353 373
県立六日町病院にてDMのfollow up
症例2 29歳 0-0-2-0
身長151cm 非妊時体重70kg
〈妊娠歴〉H4.4月、11月 自然流産
〈既往歴〉特記事項なし
〈家族歴〉実父 糖尿病で死亡
〈現病歴〉当科不妊外来にて人工授精により妊娠成立。
妊娠11週 尿糖(1+) 妊娠23週 尿糖(3+)
75gOGTTにて糖尿病パターン、GDMの診断
妊娠24〜32週まで血糖コントロールのため第一内科入院
妊娠36週周産期管理目的に当科管理入院
食事1200kcal+インスリン皮下注射 空腹時血糖87、HbA1c 5.8
妊娠37週骨盤位前期破水にて緊急帝王切開
女児2616g Apgar8点にて出生
児は両側耳介および内耳低形成、口蓋裂等の多発奇形あり。
症例3 32歳 0-0-0-0
身長153cm 非妊時体重57kg
〈既往歴〉H8 PCOにてlaparoscopy fatty liver
〈家族歴〉実父脳梗塞 家族に明らかな糖尿病の既往なし
〈現病歴〉24歳結婚、33歳(97年4月)より当科不妊外来、排卵障害の診断
排卵誘発剤抵抗性=糖尿病を疑われ75gOGTT施行。糖尿病の診断。
0 30 60 90 120
122 215 253 253 246 HbA1c 6.4
98年1月よりdiet therapy開始 1200〜1300kcal 開始時体重62kg
HbA1c 6.0 FBS 117
99/1/19 人工授精にて妊娠成立
99/3/30 妊娠12週 体重60.2kg HbA1c 5.7 FBS 92
99/6/25 妊娠24週 体重61.0kg HbA1c 5.3 FBS 96
99/10/13 妊娠40週1日 体重62.0kg HbA1c 5.3 FBS 98
3240g女児 正常分娩 母児共に異常なし
参考資料(日産婦誌51巻10号より引用)
・糖尿病と、それに関連する耐糖能低下の成因分類
・. 1型(β細胞の破壊、通常はインスリン欠乏に至る)
A. 自己免疫性
B. 突発性
・. 2型(インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で、それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある)
・. その他の特定の機序、疾患によるもの
A. 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
・膵β細胞機能に関わる遺伝子異常
・インスリン作用の伝達機構に関わる遺伝子異常
B. 他の疾患、条件に伴うもの
・膵外分泌疾患
・内分泌疾患
・肝疾患
・薬剤や化学物質によるもの
・感染症
・免疫機序によるまれな病態
・その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いもの
・. 妊娠糖尿病
・空腹時血糖値および75g糖負荷試験(OGTT)2時間値の判定基準(静脈血漿値)
正常域 糖尿病域
空腹時値 <110mg/dl(6.1mmol/l) ≧126mg/dl(7.0mmol/l)
75gOGTT 2時間値 <140mg/dl(7.8mmol/l) ≧200mg/dl(11.1mmol/l)
75gOGTTの判定 両者を満たすものを いずれかを満たすものを
正常型とする 糖尿病型とする
(正常型にも糖尿病型にも属さないものを境界型とする)
・75gOGTTによる妊娠糖尿病の診断基準
負荷量 静脈血漿ブドウ糖値(mg/dl)
0h 1h 2h
・日本産科婦人科学会 75g 100 180 150 うち2点以上を満たすもの
0h 1h 2h 3h
・国際妊娠糖尿病 100g 95 180 155 140
ワークショップ会議 75g 95 180 155 うち2点以上を満たすもの
・妊娠糖尿病のスクリーニング法
・スクリーニングの初期
a. 初期スクリーニング:妊娠の可及的早期に行う。
b. 中期スクリーニング:妊娠24週前後に行う。
・スクリーニングの方法
スクリーニング試験の当日、正常食(約400〜600kcal)を摂取して来院させ、食後2〜4時間の間に静脈血を採取し、血糖値(血漿グルコース値)を測定する。
・スクリーニング血糖値の判定
血糖値100mg/dlを超える場合を陽性と判定する。陽性妊婦には改めて診断試験としての75g糖負荷試験を行う。なお、血糖値100mg/dl未満のものでも、頻回の尿糖陽性、巨大児出産の既往、著明な肥満等の糖尿病素因を疑わせる徴候がある場合には可及的に75g糖負荷試験を行う。