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健診結果から見た生活改善法

血糖値

 

糖尿病は自分では気づきにくい

糖尿病患者は年々増え続けています。平成9年の厚生省(現厚生労働省)の調査では「糖尿病が強く疑われる人」は690万人、糖尿病予備軍と呼ばれる「糖尿病の可能性を否定できない人」と合わせると1370万人にもなると推計されています。

厚生労働省が健康長寿の実現などを目指して推進している「健康日本21」の解説の中では、「2010年には糖尿病患者は1080万人に達する」と推計されておりますが、これに対して患者を1000万人に抑えるという数値目標が掲げられています。これは、これからも糖尿病患者が増えることが予測されているからです。

推定されている糖尿病患者のうち、どれくらいの人が治療を受けているのかというと、患者調査によると約210万人で、推定患者の33%でしかありません。というのも糖尿病の初期は自覚症状のない病気だからです。

治療を受けている人のうち約85%は健康診断によって糖尿病であることが指摘されています。それだけに糖尿病は気づきにくく、わかったときには病気が進行していることが往々にしてあります。血糖値を血液検査によって測定して、高い場合には、できるだけ早く治療を開始することが大切です。

使われなかったブドウ糖が溢れる

糖尿病は膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンが不足したり、インスリンが分泌されているのも関わらずインスリンの作用不足のために起こる病気です。

インスリンは、血液中のブドウ糖を筋肉細胞などに取り込んで、エネルギー源として利用するように働きます。

ところが、インスリンが不足したり、細胞のブドウ糖を取り込む力が弱いと、細胞内に充分に入ることができなくなり、このブドウ糖が細胞外に多くなります。そして、細胞外のブドウ糖は血液中に入り、一定濃度以上になると尿から流れ出てきます。

糖尿病という名は、そこからつけられたものです。尿の中に糖が多いということは、ただ必要でなくなったから捨てられるということではなく、大切なエネルギー源である糖が体の中で充分に使われていない状態ということです。

「血糖」とは血液中のブドウ糖のことで、食事でとった糖質が胃で分解され、さらにでんぷん分解酵素によりブドウ糖まで分解されていきます。このブドウ糖が血液に入ったあと、細胞内で充分にエネルギーとして使われていれば食事によって上がった血糖値は、時間がたつにつれて下がっていくことになります。

ところが、エネルギーとして充分に使われていないと食事をした後だけでなく、空腹時でも高血糖状態が続くことになります。

糖尿病の血糖値による判定基準は日本糖尿病学会(1999年)によって定められています。それによると、以下の血糖値の、いずれかを満たすものが、糖尿病型と判定されます。

1.血糖値が常に200mg/dl以上

2.早朝の空腹時血糖値が126mg/dl以上

3.糖負荷試験で2時間後の血糖値が200mg/dl以上

正常域と糖尿病の間が、いわゆる境界域で、空腹時110〜126mg/dl未満、食後2時間値が140〜200mg/dl未満となっています。

糖尿病には1型糖尿病2型糖尿病とがあります。

1型糖尿病は膵臓でインスリンを合成するランゲルハンス島のβ細胞が破壊されてインスリンの分泌が大きく減るタイプで、インスリン治療が不可欠です。

破壊の原因としては、ウイルス感染のほかに本来は自分の体を守るための免疫細胞が膵臓を攻撃する自己免疫が考えられています。

1型糖尿病は子供の糖尿病に多く見られるものですが、発生率は5%ほどで、残りの95%は2型糖尿病が占めています。インスリンを用いなくても可能な場合と必要な場合に分けられる2型糖尿病は、インスリンの分泌量が少なかったり、働きが悪いもので、その原因としては遺伝的な要因があるうえに、食べすぎ、飲みすぎ、運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣に起因するものがあげられます。

飲食でとる糖質が多いと、血液中に入るブドウ糖が多くなり、ブドウ糖に反応して分泌されるインスリン分泌量も増えていきますが、膵臓は疲労症状があらわれにくい臓器のために、ブドウ糖が入ってくると限界まで働きます。そして、限界に達すると急に機能が低下して、インスリンの分泌量も低下していきます。

糖尿病患者の80%は肥満か肥満傾向にあり、太っていることは糖尿病の危険性を高くします。また、各種のストレスホルモンの働きにより血糖が上昇します。

ストレスを受けると自律神経の交感神経の働きが活発になることなどからホルモン分泌が乱れがちです。ストレスは体にとっては本来は危機的な状態で、これを脱するためにすぐエネルギーとなるブドウ糖を増やします。このブドウ糖は筋肉や肝臓の中に貯えてあるグリコーゲンを分解して血液中に放出することで得ています。

身体的、精神的ストレスの影響を受け、血糖値は直接的に反映されます。

糖尿病の改善には食事療法と合わせて運動療法も行われますが、これは運動によってブドウ糖の消費量を増やすだけでなく、習慣的に運動を続けていると全身の機能が高められ、ブドウ糖に対する膵臓の反応がよくなり、インスリンの分泌量を増やしていくことができるようになるからです。

血管がもろくなり重症となる合併症

「糖尿病で死ぬことはない」とは、検査で高血糖を指摘された人が、よく口にする言葉です。確かに、糖尿病になったからといって、それだけで亡くなることはありません。しかし、年間の死亡原因を見ると、糖尿病は第10位となっていて、年間12000〜13000人が亡くなっています。その多くは合併症によるものです。

合併症には網膜症、腎症、神経障害などがあります。糖尿病で亡くなる人の多くは腎症によるものですが、これらは細小血管がもろくなることによって起こるものです。

高血糖状態が5〜10年も続くと、細くて弱い細小血管が高濃度のブドウ糖にさらされて細胞が弱くなり、血管の弾力性が失われていきます。これは古くなったゴム管がボロボロになっていくのと似た状態です。

全身の細胞は、末梢血管が正常に働いて、新鮮な酸素と栄養素が運ばれ、老廃物が排出されることで健康な働きをしています。ところが細小血管がもろくなると、この働きが鈍くなって合併症が起こってくるわけです。

慢性腎不全によって人工透析を始める人のうち約35%が糖尿病性腎症で、その割合は15年前に比べて2倍以上にもなっています。糖尿病性腎症で透析を始めた人の寿命は、それ以外の腎機能障害が進行して人工透析を始めた人よりも短くなっています。

一般の腎臓病は血液を濾過する糸球体が徐々に侵されるのに対して、糖尿病性腎症は発症メカニズムも完全に解明されていませんが、糸球体と細小血管系が侵されるといわれています。

糖尿病性網膜症で1年間に約4000人が視覚障害によって障害者手帳を交付されています。この多くは失明にまでいたっています。

神経障害は合併症の中では比較的早くあらわれやすく、神経細胞に血液が充分におくられなくなることから起こります。知覚神経の感覚が鈍くなっていると足にできた傷が気づかないうちに悪化して壊疽(壊死を起こして部分的に腐っていく)となり、指や足の切断にまでいたる人も多くなっています。

神経障害は知覚神経だけでなく、自律神経にも起こり、体温の調整が乱れたり、ホルモン分泌に影響が出ることにもなります。

さらに高血糖状態が続くと、大きな血管が痛む動脈硬化へと進み、心疾患や脳血管障害の危険性も高まります。糖尿病患者は一般の人に比べて2倍以上も動脈硬化になりやすい傾向があります。

糖尿病によって血管の弾力性が低下してくると、血流を確保するために心臓の圧力が高まり、高血圧になりやすくなります。このことが動脈硬化の危険性を高めています。

また、糖尿病になると血中ブドウ糖濃度が高くなりベタついたり、赤血球などをくっつけたリ、血流が悪くなります。そのために血液中の免疫細胞(白血球、リンパ球)の流れも悪くなって、免疫力が低下していくことになります。そのために糖尿病患者の10人に1人が感染症で亡くなっています。

血糖値を安定させる食事のポイント

1.適切なエネルギーの摂取

3大エネルギー源のバランス(エネルギー比率)が基本となります。バランスよく摂るには、糖質が60%、脂質が20〜25%、たんぱく質が15〜20%となるようにします。

1日に必要なエネルギー量は体重、活動量、血糖値、肥満度、年齢、性別、合併症の有無などによって異なります。一般には健常者よりも10〜20%減らした「腹八分目」が目安とされます。

生活活動強度別の1日の必要エネルギー量
生活活動強度が軽い人(主に普通の会社員や主婦など)

   標準体重×20〜25Kcal

 

生活活動強度が中等度の人(農家や漁業など肉体労働に携わる人)

   標準体重×25〜30Kcal

 

生活活動強度がやや重い人(トレーニングや、土木作業などの重労働に関わる人)

   標準体重×30〜35Kcal

 

標準体重(Kg)は

    「身長(m)×身長(m)×22」 で求めます

 

2.良質なたんぱく質の摂取

 糖尿病の合併症を予防するためには、血管を傷めないようにするとともに、傷んだ血管の修復を進めるために、良質なたんぱく質を構成するアミノ酸のバランスが良いということで、これに当たる食品は肉、魚、卵、牛乳、大豆・大豆製品(納豆、豆腐)などがあげられます。

 

3.ビタミン・ミネラルの充分な摂取

 ビタミン、ミネラルはエネルギー代謝を促進して血糖を下げる役割をすると同時に、血管の細胞の再生を進めるために大切なものです。ブドウ糖の代謝に特に必要なのはビタミンB1で、これは豚肉、うなぎ、魚介類、豆類、そばなどに豊富に含まれています。ビタミン、ミネラルを充分に摂るには緑黄色野菜をはじめとした多くの食品を摂るようにして、肉類、乳製品、海藻も欠かさないようにします。

 

4.食物繊維の充分な摂取

 食物繊維は、糖質が腸管から吸収されるのを遅らせる作用があるため、血糖値が上昇しにくくなります。野菜は1日に350g以上をとり、水溶性食物繊維であるコンニャク、キノコ、海藻も充分に摂るようにします。水溶性食物繊維は水分を吸収して膨らみ、満腹感が得やすいうえに、余分に摂った糖質や脂肪の一部を包み込んで吸収を妨げる作用もあります。

 

5.アルコールの制限

 糖尿病の場合には、アルコール飲料は原則として禁止されます。その理由としてはエネルギー量が高く、吸収されやすいので血糖値が上昇しやすいことに加えて、食欲が進むために食べすぎの原因にもなるからです。血糖値があまり高くない人の場合には条件つきで1日に160kcalほどの飲酒が許されることもあります。その量はビールならコップ(180cc)に一杯半、日本酒ならコップ2/3程です。もちろん飲酒で摂るエネルギーは、ご飯を減らすといったようにエネルギー量の調整を行います。

 飲酒が許される条件は、「体重が標準体重以下であること」、「肝臓病や膵臓病、合併症がないこと」、「ビタミン、ミネラルが充分に摂れていること」です。これだけの量では飲んだ気がしないという人は、数日分をためておいて飲むという方法もありますが、一度に多飲するのはよくありません。飲酒は血糖値を急に上昇させやすいだけに、できれば控えるようにしたいものです。

 

6.甘いものの制限

 菓子類や清涼飲料は、砂糖が多く含まれていて血糖値が上昇しやすいので、控えるようにします。

 

7.規則正しい食生活

 一度食事を抜くと、次の食事は空腹感を満たすために食べる量が多くなり、つい食べすぎになりがちになるため、血糖値も上がりやすくなります。三食を規則正しくとり、三食が同じような分量になるようにしましょう。早食いは食べすぎの原因です。血糖値が上がって満腹感を得るまでには食事を始めてから15分ほどかかるので、ゆっくりと食事し、急に血糖を上昇させないことが大切です。

 

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