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糖尿病・・・食習慣を考える
患者数690万人、予備軍を合わせると1370万人―糖尿病の驚くべき実態を、旧厚生省がはじめて明らかにしたのは4年前で、それ以降も国内の患者数は増加の一途をたどっている。毎年30万人ずつ増加中で、現在は1500万人(予備軍を含む)位と推定されている。糖尿病には、高脂血症や高血圧症、さらに動脈硬化症による心筋梗塞や脳梗塞などの合併、加えて神経障害、網膜症、腎臓障害という「糖尿病の三大合併症」もある。たとえば、糖尿病性網膜症による失明(年間4000人)は、成人の中途失明原因の第一位であり、腎臓が働きを失う「慢性腎不全」のため、いわゆる人工透析(血中の老廃物を機械的にろ過し、体液を浄化する治療)を新たに開始する糖尿病患者数が、毎年1万1000人ずつ増えている。
糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンが欠乏するか、またはその作用不足によって生じる代謝異常(新陳代謝の障害)である。インスリンの不足により血液中のブドウ糖が消化不良の状態となり、高血糖状態が続くと全身の血管が砂糖漬けの状態に陥り、目や手足の毛細血管から脳や心臓の大血管までがぼろぼろに壊れてしまう。糖尿病には1型と2型があるが日本人では95%以上が2型の糖尿病である。糖尿病は知らないうちに病気が進行するというやっかいな病気である。はじめは無症状のことが多く、その後、のどの渇き、体重減少など糖尿病症状が出てきて気づく人もいる。しかし糖尿病に気づかず放置していると目がかすむなどの網膜症の症状が現われ、ひどい場合は失明する。糖尿病腎症も同じで知らず知らずに進行して腎不全に陥ることがある。
糖尿病の診断のためにはブドウ糖負荷試験がおこなわれ、空腹時が126(mg/dl)、2時間値が200、随時血糖値で200以上を糖尿病パターンという。健康人の正常血糖値は空腹時で110、ブドウ糖負荷2時間値で140以下である。その中間、たとえば空腹時が110と126の間、2時間値が140〜200の間を耐糖能障害あるいは糖尿病予備軍という。1時間値の血糖値が180以上の人は将来糖尿病に進展しやすいといわれ、食直後に高血糖にならないように気をつけたい。糖尿病の原因としては、遺伝的素因や環境因子に加えて、車が足替わりになったための運動不足、適量を超えた飲酒、高カロリー・高脂肪・動物タンパク質などの食べ過ぎ、ストレス過多などの生活習慣が関係し、糖尿病は生活習慣病の代表といえる。
食生活について考えてみると、欧米諸国はもともと乳脂肪、動物性食品が多く、日本人は元来動物性食品の摂取が非常に少ない国民であった。戦後しばらくはお米が中心で、脂肪の摂取はエネルギー比で10%以下であったものが、経済復興とともに生活が豊かになり、脂肪の比率がどんどん上昇していった。1973年には20%を超え、1988年になると25%に達し、現在は26%くらいである。厚生省のデータによると過去52年間の日本人のカロリー摂取量は平均2116+−84キロカロリーで、戦後から現在まで日本人のエネルギー摂取量はあまり変わっていないという。脂肪の摂取が増え炭水化物が減少したことに加え、自動車社会による運動量の減少も糖尿病が増加した原因である。摂取する全体の量は変わらないのに運動量が減ったという相対的なエネルギー過剰摂取状態によるもので、食物繊維や多糖類が減って脂肪が増えたという食事内容の変化も大きな要因である。簡単にいえば、ご飯を食べなくなって脂っこいおかずを食べるようになったということである。戦後、栄養失調状態を改善するために、栄養専門家がおかず推奨キャンペーンを実施したため、ご飯よりおかずのほうが栄養価が高くてすぐれていると認識している人が少なくない。もともと日本人には血糖値や高脂肪を十分にコントロールできる素因がないともいわれ、脂肪摂取が増えた食生活の変化が日本人の糖代謝に影響を与えている。
朝食を抜く人が増え、夕食の時間が1〜2時間くらい遅くなり以前より摂食リズムが変わってきた。朝食を少なくする、あるいは欠食すると、どこかでまとめ食いをするようになり、食後血糖は上昇しやすくなる。現代人は夜遅くまとめ食いして、朝は食べないという摂食パターンの人が増えている。同じカロリー量を朝摂るのと、昼、あるいは、夜中摂るのでは食後の熱産生が異なる。熱産生は朝が一番高く、夜中はほとんど上がらないため、夜食を摂りすぎると肥満になりやすい。さらに早食いという食習慣の人も血糖が上がりやすい。日本人の糖尿病の特徴は、インスリンの初期反応が低いことで、ゆっくり食べてインスリンが分泌されてくるのを待つことが必要で、そうすれば食後の過血糖を抑えることが出来る。特に血糖値は夕食後が一番上がりやすいので、30分以上かけてゆっくり食事をして、食後にはラジオ体操などをすると効果的である。
食事療法は、糖尿病治療の基本であるがライフスタイル以前のように戻すことも必要である。栄養素バランスの良い健康食といえる糖尿病食は血糖値の改善・肥満の是正・乏しいインスリンの節約による膵臓のインスリン分泌能の保持、随伴する高脂血症の改善などに効果があるが、厳格な食事療法はあまり長続きしない。私としては摂取食物の割合を蛋白質が15〜20%、糖質が55〜60%、脂肪は20%ぐらいにするのが望ましと考えている。具体的にはジュース、コーラ、和生、洋菓子、ジャム、アイスクリーム、乳酸飲料,甘いヨーグルト,ドリンク剤,はちみつなどの甘いものはなるべく食べないようにする。そしてお酒は一日一合以内とし、ご飯,パン,めん類などの主食は現在より減らさないこと。おかずのうち野菜類は十分に食べ,肉,魚,天ぷらなどカロリーの高いものは,現在より二割減らし、その代わりに牛乳を毎日一合ずつ飲むのがよい。
今まで述べたことをまとめると糖尿病が増加した原因として、栄養面では総カロリーにおける、炭水化物の多糖類の割合が減少し、脂肪の割合が高まったことが上げられる。生活習慣では欠食やため食い、早めしが一般化し車社会になって運動不足も大きな要因である。人生八十年。日本人の寿命は延びたが、健やかに長生きする人がそれに比例して増えたかどうかは疑問である。むしろ「持病もち」の中高年ばかりが多く目立ちはじめているようで、特に糖尿病という人生病はその代表格と呼ぶべきだろう。糖尿病の人は血糖コントロールを上手にやって病気を悪化させないこと、そして糖尿病予備軍はもちろん、糖尿病の危険因子(家系、肥満、多飲多食、運動不足、ストレス)が気になる人は、日ごろの健康管理と早期発見を心がけることが大切と思う。