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インスリン依存型糖尿病の食行動の異常について
清水雄喜 1.はじめに 糖尿病は食事療法・運動療法・精神指導等を統合的に行うことによって、その代謝異常を コントロールすることが可能な疾患である。最近、欧米では摂食障害がIDDMの治療過程 でしばしば併発することがあると言われている。このことから、駿河台日本大学病院小児科 の協力とご指導を得て、同病院に通院中のIDDM患者で食行動に異常のあるものとその異 常がなくて血糖コントロールが良いものを年齢別に分けて、それぞれにどのような特徴があ るか、食事の状況・生活環境・日常生活の実態・糖尿病治療についての意識及び体重とHb A1cの関係を調査した。 またこの調査で認められた所見を裏付ける為に、小児期にIDDMを発症した患者につい て、食行動や体格、血糖コントロールの状態について調査すれうと共に、食事の状況・自分 の体型に対する感想・糖尿病での日常生活の悩みなどについて調査をした。 2.研究方法 1)駿河台日本大学病院小児科で治療中のIDDM患者の食行動に異常のある患者6例と食 行動に異常が無く血糖コントロールは良い患者1例について、年齢別に分けて、食事の 状況・生活環境・日常生活の実態・糖尿病治療についての意識及び体型とHbA1cと の関係を調査した。 2)駿河台日本大学病院小児科で治療中のIDDM患者20名(男子8名・女性12名)に、 食生活の状況・自分自身の体型についておよび糖尿病での悩みについてのアンケートを 渡して調査を行った。 3.研究成績 1)食行動に異常のない患者は、HbA1cの値は正常で食事は規則的に正しい量を食べ、 母親の言うことをしっかり守り糖尿病に対して前向きに取り組んでいた。一方、食行動に異 常のある過食傾向の患者5例では、HbA1cの値が高く、イライラする時やお腹が空いた 時に自己制御できずに過食になったり、いじめや不登校等の精神的な影響から過食になるも のも見られた。そして、間食の摂取が特に多く肥満で、その5例中2例では脂肪肝や肝機能 障害・神経症害などの合併症が見られた。また、他の1例には拒食傾向を認め、その原因に は受験勉強のストレスが関係していると思われた。他方、就職で将来について希望が持てた ときや合併症の危険を意識した時は、治療意欲が向上して血糖コントロールが改善されてH bA1cの値が低くなるのが認められた。過食・拒食の患者のHbA1cと体重の関係につ いては、相関があるとははっきりと言い切れないが、7例中3例が体重が増加するとHbA 1cが上昇する傾向があり、拒食傾向のある1例では体重が減少すると、HbA1cが低下 する傾向が認められた。 2)間食は年齢に関係なく殆どの患者で習慣化されており、年齢が高くなると食事時間が 不規則になったり、外食が増加したりする傾向が見られた。過食ややけ食いは半数異常に見 られ、特に女性に認め、ストレスのある時に食べ過ぎることがあると回答していた。なお体 型については、殆どの女性が「太っていること」が不満であると回答していた。 4.考察及びまとめ 患者は食事制限やインスリン注射などを毎日欠かさずに行って血糖をコントロールしなけ ればならない。特にIDDMでは発症年齢が低いため、幼い頃から糖尿病と付き合って行か なくてはならず精神的負担はかなり大きい。また思春期では、糖尿病の自己管理の難しさや 食生活、日常生活での悩みが多くなり、血糖コントロールが不良になることがある。 本調査での、食事状況や過食の状況・体型についての回答を見ると、思春期以降の患者の 殆どが過食や拒食の危険因子を持っていると思われた。従って今回の調査成績を参考にして、 発症時から病気をよく理解させ、食事作りを積極的に行わせて、食事について自立できるよ うに指導し、将来を直視させて食行動に異常を持たぬように、糖尿病管理に対して前向きに 取り組む強い意志を持たせる精神的な指導を行う必要があると思われた。また、栄養指導は 患者自身が一方的に受け身になるような食事指導をするのではなく、幼児、学童、思春期、 成人患者と年齢別に指導内容を検討することが重要であると考えられた。その為には、医師 や看護婦と協力をしながら患者の指導を行うことが大切である。