[ INDEX ]
- はじめに
- 糖尿病の分類
- エネルギーシステム
- 人類の食生活の歴史
- 新縄文糖尿食:SJT食とは?
- SJT食の治療効果
- 欧米の糖尿病食とSJT食
- 血糖指数:グリセミック・インデックス
- 血糖負荷:グリセミック・ロード
- 糖尿病の人と糖質
- SJT食コントロール・教育入院
- 新縄文糖尿食:SJT食療法が対象とならない場合
- 新縄文糖尿食:SJT食療法の申し込み
- 新縄文糖尿食:SJT食療法をより詳しく知るには
【 はじめに 】

糖尿病の治療は、1に食事、2に運動、3、4がなくて、5に薬といわれていますが、栄養士の言うとおり食事に十分注意していても血糖コントロールがなかなかうまくいかない患者さんもいます。そういう患者さんに今までとは違う高雄病院独自の画期的な食事療法をお薦めします。それが糖質摂取を制限する新縄文糖尿食(SJT食)です。

【 糖尿病の分類 】

糖尿病の分類ですが最近は、従来のインスリン依存型糖尿病(IDDM)、インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)
という言い方はしなくなりました。糖尿病を病因による分類と、現在の状態を表す分類に整理した方が、すっきりするからです。
■ 病因による分類
- 1型糖尿病(従来のIDDMとほぼ一致)
自己免疫反応でおこることが多いようです。
- 2型糖尿病(従来のNIDDMとほぼ一致)
日本の糖尿病の95%以上は2型糖尿病です。
■ 糖尿病の状態の表現
- インスリン依存状態
- インスリン非依存状態

【 エネルギーシステム 】

人体に蓄積されているエネルギーとして脂肪、グリコーゲンがあります。 例えば、体重50Kgで体脂20%の普通の人で脂肪の蓄積としては9万Kcal、グリコーゲン 1000Kcalとなります。(圧倒的に脂肪の蓄積が多い)
ブドウ糖−グリコーゲンのエネルギーシステムは、本気で運動したら1、2時間しかもちません。 一方脂肪を燃やすエネルギーシステムは1、2ヶ月は優にもちます。冷静に考えると、 「ブドウ糖−グリコーゲンのエネルギーシステム」は緊急事態(闘争、逃走・・・)のシステムで、 平時は人類は「脂肪を燃やすエネルギーシステム」で活動していた可能性が高いといえます。生理学的にも安静時や軽い運動時は、心筋・骨格筋は脂肪酸をエネルギー源としていて、激しい運動時や糖質を食べて血糖が上昇した時のみ、ブドウ糖をエネルギー源とします。安静時にブドウ糖をエネルギー源としているのは脳・網膜・生殖腺の胚上皮だけです。

【 人類の食生活の歴史 】

人類の歴史は約400万年と言われています。農耕が始まるまでの300〜400万年間は木の実、 ナッツ、魚、果物、野草、小動物、昆虫・・・が日常的な食料です。 このころは血糖が上昇することはほとんどなく、インスリンも基本的に追加分泌される必要もない状況だったと考えられます。
人類が穀物を定期的に食べ始めたのは、農耕開始以来の4000〜5000年間であり、人類の歴史の千分の一の期間にすぎないわけです。日本では弥生時代頃から約2500年間です。 穀物を常食するようになりさらに19世紀に精製技術が出現して柔らかい口当たりの良い吸収されやすい食物を 日常的に摂取するようになっていきました。吸収されやすい食物(特に糖質)を摂取し、血糖が急峻に上昇することは人体にとって極めて異常な事態です。
現代のように三食、米・パン・うどん・ラーメン等のデンプンを食べ、砂糖のたっぷり入った菓子類や飲料を常時摂取するような食生活だと血糖が急激に上昇し食事のたびに多量の追加インスリンを必要とし、脂肪酸は燃えなくなります。余剰の糖はインスリンにより脂肪に変換されて体重が増加します。肥満になれば細胞のインスリンへの抵抗性が増します(自分のインスリンの効きが悪くなる)。また長年にわたり絶えずインスリンを多量に分泌してきた膵臓は疲弊し、ついには糖尿病を発症します。今の文明国でこれだけ糖尿病が増えているのも必然的なことかなと思います。
興味深い例として、アラスカに住むイヌイットの人々がいます。 極寒の地で、肉や魚を生で食すのみで1万年以上生活してきました。(穀物も野菜も極寒の為生産できない) このような食生活ですとインスリンは基礎分泌以外は不必要になります。 従って近代文明が入るようになる迄は、糖尿病はほとんど存在しませんでした。

【 新縄文糖尿食:SJT食とは? 】

糖尿病の食事療法として「男性は1600Kcal、女性は1200Kcal」と言う風に、日本ではカロリー制限優先の画一的な方法により対応しています。日本糖尿病学会推薦の糖尿病食は「高糖質、低脂肪食」で対エネルギー比で糖質約57%、脂質約25%、蛋白質18%ていどです。
しかし三大栄養素のうち血糖を上昇させるのは糖質のみであり、カロリー制限よりも摂取食物の質のほうが本質的に重要です。ちなみに糖質は摂取後15分〜90分で100%、蛋白質は3時間前後で約50%、脂質は数時間〜12時間で10%未満が血糖に変わります。
近年空腹時血糖値だけでなく食後高血糖値が心臓や脳の血管に動脈硬化を発症させると考えられています。新縄文糖尿病食(Shin Johmon Tounyou-Shoku:SJT食)は、血糖を上昇させる糖質摂取を制限することを優先順位の一番にもってきた食事療法です。縄文時代の人々が日常的に食べていたようなものを、 現代風にアレンジしてさらに糖尿病にいいように工夫を加えた食事療法です。
具体的には縄文時代は、木の実、ナッツ、魚貝、果物、野草、小動物・・・などを中心に常食していたと考えられます。 SJT食は、これらに豆類・ミソ・豆腐・納豆や野菜、適量の肉や、適量の乳製品など糖質含有量の少ない食品を加えたものです。
入院中の一般的なSJT食は昼食のみ玄米飯を食べて、朝と夕食はおかずだけで主食なしだと、1200〜1600Kcal(対エネルギー比で糖質約30%、脂質約45%、蛋白質約25%)ていどです。より速やかな治療効果を目指すときは、3食とも主食無しの「スーパーSJT食」を入院当初1週間ていど行うこともあります。
なお退院後は糖質を多く含む醸造酒は禁止ですが、糖質を含まない蒸留酒である焼酎やウィスキーは適量なら許可しています。アルコールそのものはエンプティーカロリーとされ、血糖を上昇させることなく一番最初にエネルギー源として利用され少量なら糖尿病への直接作用は少ないと考えられます。

【 SJT食の治療効果 】

ブドウ糖・砂糖・デンプンなどの糖質摂取を少量に押さえれば血糖が上昇せず、インスリン追加分泌はほとんど必要なくなります。このため膵臓のβ細胞(インスリンを分泌している細胞)は休養できます。コントロール良好な状態が続けばある程度インスリン作用の回復も期待できます。
SJT食なら(糖質を摂取しない限り)ほぼリアルタイムに或いは2、3日以内に食後血糖値の改善があり、通常のカロリー制限を中心とした糖尿病食と比べその効果は極めて速やかです。数日以内におおむね120〜180mg/dl以下にコントロールされます。それに伴い空腹時血糖値も改善していきます。HbA1cは1ヶ月に1%くらいの割合で改善していきます。
また入院時1日尿糖が100gあったある患者さんが従来の糖尿病食では翌日94g、1週間後50gていどの速度で改善が見られましたが、SJT食に切りかえたところ翌日50g→8gと急速に減少し1週間後には2gとさらに改善がみられました。
SJT食により、ほとんどの患者さんで、入院後は経口血糖降下剤の内服は不必要になります。インスリンを注射している患者さんは全て減量することができました。また少数例ですが、2名の患者さんは長年注射していたインスリンから離脱できています。
一般のSJT食だと昼食には玄米飯180gを摂取するので昼食後だけは200mg/dlを越える高血糖となりますが、この場合も夕食前には血糖値は改善がみられました。また中性脂肪値も速やかに改善し、総コレステロール値はゆるやかに正常化していきます。
1999年から約70名の糖尿病患者さんが入院治療されましたが、入院時血糖が500〜600mg/dlであったような患者さんも含めて、糖質を制限した朝食や夕食の食後血糖値は120〜180mg/dl程度で200mg/dlを越えた症例はありませんでした。
2001年1月から2003年12月までで統計を取ったところ50名の糖尿病患者さんが入院してSJT食の治療をおこなっていました。男性27例、女性23例、年齢は26才から76才で平均58.3才でした。50才代が24例ともっとも多かったです。このうち2004年現在も外来通院し経過を追えている症例は42例でした。
経過を追えた42例の糖質制限食開始時と最近のHbAIcの値を図1に示します。37例で改善が見られ、コントロール極めて良好とされるHbA1cが6.4%以下の症例は22例でした。当たり前の話ですが、SJT食を守れている人は経過良好で守れてない人はやはりよくありませんでした。
図1) 治療前後のHbA1Cの推移

【 欧米の糖尿病食とSJT食 】

糖尿病は、一般にはインスリンの絶対的、相対的不足のために糖代謝や蛋白質代謝、脂質代謝に異常を生じ、慢性的な高血糖の結果、特有の糖尿病合併症をもたらす病気と定義されています。しかし私達は、糖尿病の本態はあくまでも糖質処理システムの機能低下・破綻が主と捉えています。即ち糖質を食べなければ血糖が上昇しないのは周知の事実です。
糖尿病の患者に糖質摂取を厳しく制限する食事療法は、日本では高雄病院以外ほとんど見られません。しかし欧米とくにヨーロッパにおいては、糖質摂取を減らす食事療法が特に異端ではなく、糖質管理食(carbohydrate counting)という概念が定着しています。また米国においても、1993年に発表された1型糖尿病研究のDCCTにおいて糖質管理食が成功を収めたことで、食品交換表(カロリ−制限最優先)一辺倒ではなくなりつつあります。
低炭水化物 さらに2002年の米国糖尿病協会(ADA)ガイドラインで、糖質とオリーブオイルなど1価不飽和脂肪酸(MUFA)でカロリー比60%〜70%を摂る「地中海型の食事」が正式に推薦されました。米国の糖尿病患者は、従来の「高糖質、低脂肪食」、地中海型の「低糖質、高脂肪食」、そして糖質管理食などを自分で選択できることとなったのです。
糖質摂取を一定減らしてはいますが3食共主食を摂取する糖質管理食に対して、さらに一歩進めて昼食のみ主食を摂取する或いは3食とも主食を摂取しないのが高雄病院のSJT食です。

【 血糖指数:グリセミック・インデックス 】

SJT食の治療効果の根拠の一つとして、 グリセミック・インデックス(Glycemic Index:GI)のことを知ってもらう必要があります。
グリセミック・インデックスは血糖上昇反応度とも言われます。 糖質を50g含む食品を摂取した後の血糖値の上昇を、 基準となる食品(ブドウ糖50g)を摂取した後の血糖値の上昇と比較し、パーセントで表した数字です。
GIが高い食品ほど血糖が急激に上昇し、インシュリンを急激に分泌する必要があり、糖尿病の人には負担になります。
実際2種類の同じカロリーの糖質(例えば玄米と白米)を摂取しても血糖値の上がり方はそれぞれ異なります。 ちなみに玄米のGIは50で、白米は70です。ブドウ糖のGIは100です。豆類は15、乳製品は35くらいです。
当然、血糖値をあまり上昇させない食品のほうが糖尿病治療食としては好ましいのです。簡単に言えばSJT食はGIの低い食品を集めておいしく食べることができるように工夫したものなのです。
GI70以上は高い。56〜69が中等度。GI55以下は低い。と評価されています。

【 血糖負荷:グリセミック・ロード 】

GIの意義は個々の食物の糖質が摂取後如何に速く血糖に変換されるかだけを見ていますが、摂取された糖質の量は教えてくれません。それに対してGL(Glycemic Load)は 糖質の質及び摂取量を考慮したものです。GL=「一人前の分量の食物に含まれる糖質のグラム数」×「その食物のGI/100」で計算します。
GL20以上は高い。11〜19中等度。GL10以下は低いと評価されています。
GIやGLといった概念は残念ながら日本ではまだ夜明け前の状態ですが、ヨーロッパではすでに一般的です。米国では1999年頃までは一般的ではありませんでしたが、2000年以後、GI、GL関連の文献が発表されることが多くなりました。これらのほとんどは、今まで糖尿病や心臓病や肥満の食事療法の中心であった低脂肪食の治療効果に疑問を投げかけるものです。即ち高脂肪食よりもGIやGLの高い食物を摂取するほうが心血管病変や2型糖尿病のリスク要因が増えるという内容です。

【 糖尿病の人と糖質 】

GI以外にもう一つとても大切な事実があります。すなわち糖尿病をすでに発症して一定期間経過した人は正常人に比べ、 糖質を摂取したときに血糖が異常な高値になってしまうのが大きな特徴なのです。例えば玄米を食べて2時間後の血糖を測定したとき、 正常人だと100mg/dlくらいですが、糖尿の人は200〜400mg/dlにもなってしまいます。食後高血糖が続けばインスリン分泌は抑制され、インスリン抵抗性がまし、さらなる高血糖を引き起こします。この悪循環を糖毒と呼んでいます。
GIは基準と比較したパーセントなので、糖尿の人でも玄米のGIは50の可能性はあります。しかし、糖尿の人が糖質を摂取したときは低GI食品(玄米や蕎麦など)でも必ず高血糖となるので、注意が必要なのです。これは穀物でもいも類でも、 糖質を多く含む食材はすべて同じことがいえます。
一方豆類や豆腐や魚や肉や乳製品やナッツ類は、適量であるかぎり、糖尿の人でも血糖はほとんど上昇しません。
軽い糖尿病だと高雄病院でも今まで玄米菜食風の食事療法(本来の日本型食生活)でコントロールしてきました。
しかし、これでどうにもコントロールできないようなあるていど長引いて悪化した糖尿病の人達にSJT食を導入したところ
劇的な改善をみたのです。
玄米菜食風とSJT食の最大の違いは糖質の摂取量がSJT食が少ないことです。また今流行の「低インスリンダイエット」と比べてもやはりデンプン摂取量が少ないのが特徴です。

【
SJT食コントロール・教育入院 】 
SJT食の適応となるのは、基本的に「2型糖尿病」です。中年になっておなかが出てきて、とうとう糖尿病になったというよくあるパターンが2型糖尿病です。また、健診で「糖尿病の疑い」を指摘された方、食べ過ぎると血糖が上昇しやすい「境界型糖尿病」の方も良い適応です。
SJT食による入院プログラムはコントロールと教育を兼ねて2週間が基本です。ほとんどの患者さんにおいて入院中に劇的な改善がみられます。遠方の場合3〜4週間入院ということもあります。
インスリン治療中の方は、SJT食療法によってインスリン量の減量、あるいは離脱も可能な場合がありますが、入院当初のインスリンの減量を慎重に行う必要があるため3〜4週間の入院期間が必要です。 外来受診時にSJT食療法が可能かどうか、担当医にご相談下さい。
SJT食療法は、毎日の食事を見直すことで糖尿病の良いコントロールを目指す治療法です。退院後もSJT食療法を続けて頂くことが治療の前提となりますので、基本的に当院外来に定期通院可能な方が対象となります。

【 新縄文糖尿食:SJT食療法が対象とならない場合 】

糖尿病が進行して腎臓などに合併症をおこしている方は、SJT食入院プログラムの対象になりません。
健診で「治療を必要とする糖尿病」と言われた方で「口渇、多飲、多尿、倦怠感」など糖尿病の自覚症状が明らかでない方でも、 意識しないままに腎症など合併症を発症していることもありますので、まずご近所の医療機関で糖尿病の診断、病期・合併症の評価を受けられることをおすすめします。
合併症がある場合、遠方から外来受診されてもSJT食入院治療の適応とならないのでご注意ください。

【 新縄文糖尿食:SJT食療法の申し込み 】

SJT食入院プログラムに興味のある方は「075−871−0245」に電話して担当の職員とご相談ください。
電話受付は午後1時〜4時(月〜土)です。
現在、他の病院・医院で糖尿病治療中の患者様で入院希望の方は、主治医の先生に紹介状を書いて頂くようお願い申し上げます。 京都市近隣にお住まいで高雄病院外来に通院できる患者様は、お電話でご予約の上、一度外来を受診して下さい。 その際に担当医が入院のご相談をお受けいたします。京都府下、府外の方も、まずお電話を下さい。


関連ページ:
・ 診療案内>入院診療
|