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兵庫保険医新聞『研究面より』
臨床医学講座より
「松江赤十字病院における糖尿病の食事指導」
松江赤十字病院栄養課
田中 美紗子
氏講演
(兵庫保険医新聞:2003年5月25日・6月5日付)
糖尿病における食事療法は薬物療法、運動療法とならび重要な役割を担っている。また、それを実施すべき食事教育は、その方法によって血糖のコントロールはもちろん、患者のQOLが大きく左右される。当院では楽しく継続できることをモットーに、栄養指導は以下に示すがごとく対象にそって5つのパターンがある。
1.入院患者のための栄養指導
集団教育として糖尿病教育入院プログラム(表1)にそって講義、バイキング、調理実習を実施している。食材料をそのまま展示して、調理後の変化も見てもらっている。調理実習には4〜5人程度で栄養士1人、看護師1人のスタッフで実施している。方法は材料を表示してその場でメニューを決める。所要時間は11時〜13時までの2時間である。
調味料は、まず患者さんが常用している量を教えてもらい、後で修正するようにしている。スタッフと一緒に試食をしながら入院前の食事を振りかえり、退院に向けての食生活について話し合う。
個人指導は、ベッドサイドあるいは教育指導室で実施している。栄養指導指示票にもとづいて、入院前の食事調査を実施し、医師と話し合いによって入院中の食事量の設定をしている。教育入院プログラムに併行して、個別指導も実施し、本人の理解度にそっての食事の計量、食事記録を定めている。
退院時の指導はできる限り家族とともに実施するが、家族とともに生活している人、一人暮らし、単身赴任をしている人、それぞれによって教育の方法を変えている。調理実習が必要な人には調理実習、外食の多い人は外食の選び方を、惣菜の選び方を学ぶことが必要な人にはマーケット、コンビニめぐりなどを組んでいる。家族の多い人は家族の食事の中から自分の食事の取り方など、家族に迷惑がかからないように食事療法に取り組めるよう指導する。つまり退院後の生活状況に合わせて実施している。
退院2〜3日前には患者さんに食生活設計を立ててもらう。それによって食事療法への理解度を確認し、同時に退院後の食事に近い食事を体験してもらう場合もある。
2.外来患者のための栄養指導
集団指導として外来糖尿病教室(1年に8回開催している)がある(表2)。
他のクリニックの患者さん、地域の医療スタッフにも門戸を開いている。医師の講義に必ず食事の話とバイキングを組み合わせ、他のコ・メディカルにも参加してもらって実施している。夜間教室は教育入院できない人の初期教育として実施している。毎週月曜日18時〜19時まで医師が3講義、栄養士が1講義受け持っている。時間的にバイキング、調理実習ができにくいために、希望者は教育入院の実習のプログラムに参加してもらうこともある。
また、退院3カ月後に教育入院同窓会を実施している。緊張が解けかけた時の一石になればよいと思っている。血糖自己測定している患者が276人いるので血糖自己測定の会を1年に1回もっている。
この会の中でも外食弁当をとって外食の勉強会をしたり、食事療法における情報提供をしている。個人指導は栄養指導票にもとづいて内科外来に隣接した栄養指導室で(月曜日から金曜日まで8時30分〜17時)実施している。予約でなくても医師の指示票とカルテがあれば、外来患者だといつでもすぐに指導できるようになっている。
指導件数は年間約3,700人、1日平均15〜16人である。1回平均約15分〜30分で、繰り返し指導している。患者さんの理解度に合わせ繰り返し指導して育つ人、バイキング・試食会で体験学習が必要な人、調理実習が必要な人、教育入院が適切な人、夜間教室が合っている人と、どの教育が適しているかもこの指導室で判断することにしている。
表2 平成14年度外来糖尿病教室日程表
3.小児糖尿病患児のための栄養指導
小児糖尿病の子どもたちは、成長するにつれて、ライフステージが変わってくる。その都度、子どもたちに合った指導が必要となってくる。小学1年生から中学3年生までは夏にサマーキャンプ、高校、大学、社会人のため春にスプリングキャンプも実施している。
また、春のピクニック、秋の一泊レクリエーションは全ての患児、家族を対象に実施し、年間を通して糖尿病を学び、ふれあえる場をもっている。さらに、小児糖尿病親の会(ふれあいの会)は3カ月に1回開催し、親の教育とキャンプに参加できない低年齢児や、2型糖尿病の子どもたちに教育とふれあいの場を持てるようにしている。
4.糖尿病友の会活動における栄養指導
当院は患者会(すこやか会)445人で構成されていて、日本糖尿病協会に加入し、活動している。1泊レクリエーションでは、アルコールも提供し宴会料理の指導もしている。また、日帰りレクリエーションでも楽しみながら外食、間食の指導を試みている。さらに、ホテルでのグルメの会は日本料理の会席料理600kcalで献立を立ててもらい、日本の伝統の味に舌鼓を打ってもらう。楽しみながら糖尿病の知識を得、病気を持った人生に悲観することなく、夢を描きながら生きてゆく集まりであると思っている。
われわれが患者さんの生きた姿を学ぶ絶好の場でもある。また、この会で育った患者さん(会員)が後で述べる地域での友の会づくりの核になって活躍してくれている。
5.地域における栄養指導
平成11年現在、島根県においては59市町村うち49市町村で何らかの糖尿病教育が実施されている。当院でも昨年、栄養士が地域の教室に参加したのは12市町村である。講義やバイキング、調理実習を保健所や市町村の保健師、栄養士、食生活改善推進協議会の人たちと地域の診療所のスタッフなどとともに実施している。
患者さんが居住している場での教室では、その地域の素材(地域で採れた食品)を使い、地域の食文化を尊重して、糖尿病食を地域の人と一緒につくっている。このことは、糖尿病食が地域で市民権を得て、地域全体の健康食普及にもつながっている。子どもの食事、おやつの見直しなど糖尿病教室が地域住民の健康教室に発展していった地域もある。患者さんの合併症を防ぐだけではなく、次世代の糖尿病を出さないための一次予防にも重要な役割を果たしてきつつある。
さらに、この地域の教室に集う人たちで友の会が生まれ、現在11市町村で日本糖尿病協会に地域部会として加入している。地域でのこの高まりが、「地域における糖尿病教育の指導者が欲しい」、また、「地域のスタッフがもっと勉強したい」という要望につながり、1987年に島根県でコ・メディカルの糖尿病勉強会「糖尿病を考える会」の組織化へとつながっていった。
6.糖尿病を考える会から糖尿病療養指導士認定制度へ
1999年現在、「糖尿病を考える会」の構成メンバーは看護師139人、保健師59人、栄養士131人、薬剤師13人、その他18人、合計360人で構成されている。特別会員の医師は35人である。講演会、分科会、症例検討、1日のみならず1泊研修などを重ねながら年間3〜4回の例会を12年間続けてきた。
今回、(社)日本糖尿病学会と(社)日本糖尿病協会で糖尿病療養指導士が認定される動きに呼応して、さらに糖尿病に対して高度な知識を身につけ、患者さんに信頼をもって指導していきたいという気運が「糖尿病を考える会」の中に盛り上がってきた。そこで1997年に「糖尿病療養指導士認定制度委員会」準備委員会をつくり、1998年12月、専門医の方々にご援助いただいて、島根県糖尿病療養指導士認定制度委員会を立ち上げることができた。
会長には県の医師会長、顧問には大学教授、日本糖尿病協会県支部長にも加わっていただいた。管理栄養士(田中)も副会長として加わった。
研修会受講資格は、全国の受講資格に加えて日本糖尿病協会の会員であること、患者会に参加した経験があることを条件とした。患者さんの手助けができることを最優先としたからである。1998年9月に第1期研修生を募集した。50人の定員に対して98人の受講者があり、認定委員会で研修会受講資格の案をねった。地域の中で糖尿病教育、予防に貢献している保健師・認定医が15人しかいない島根県で、熱心に糖尿病患者さんを見ていただいている医師の参加も認めた。
地域の療養指導士は地域で求められている職種の人たちを加えていることも特徴である。68人が第一期研修生と認定した。受講料は5万円で土・日を使った研修会を年3回。2年間をかけて講義のみならず実習も加えている。研修会で30単位、日糖協県支部総会など所定の研究会や活動に10単位以上参加したものを認定試験の有資格者とした。
地域の療養指導士制度の特徴は充実した研修にあると思う。各々の地域で育った療養指導士が全国レベルの療養指導士に挑戦し、さらに高いレベルの糖尿病療養指導士として育っていくことが重要であると思う。